「MAKERS」の意味するところ
書籍「MAKERS」がかなり話題になっています。読んだ人も結構多いと思います。というか、これは必読本でしょう
「MAKERS」のザックリした内容
たぶん、だいたいこんなことが書いてあります...
- 3Dプリンタが凄い、これは流行る
- 誰でもハードウェアを作ることのできる時代になる
- ソフトウェアと同じようにハードウェアも自由化される
- 資金はクラウドファウンディングなどの方法で集められる
- 大量生産品ではない、小ロット生産がビジネスになる
「MAKERS」は日本で流行るのか?
MAKERSの内容は事実をもとに書いているだけあって、非常に現実味があり、製造業がほとんど無くなったアメリカでは、本の内容のように市場が立ち上がる可能性が高いと思います。
本を読んだ人は「じゃあ日本はどうなんだ?」と考えるでしょう。この問いに対する反応は結構面白く、聞いてみるとおよそ
- ハード知らない人「これは凄い!絶対来る!」
- ハード知ってる人「日本では難しい、おそらく無理」
僕もハードの複雑さや品質の安定の難しさを知っているので、日本ではハードを軸にしたMAKERSの流れは、実は結構難しいのではと思っている派です。しかし、下記にあるような「初音ミク」に当たる「強力なコンテンツ」の出現があれば、面白いことになると思います。
今の時代の背景にあるもの
一方、今は絶賛ソフトウェアの時代で、すでに誰でもWebアプリを公開したり、ソフトウェアを販売できたりできています。MAKERSの流れで押さえておきたいのは、初音ミクがブレイクした「ボカロ」の影響です。
ボカロのお陰で
つまりは、音楽作成という分野においてはすでに「MAKERS」のようなことは起きていると考えられます。しかし、誰でも作曲ができることにはなったとしても、誰もが作曲家になったわけではありません。ただし、曲を作るという行為が自由になったおかげで「曲を作るプロセス」を楽しむことができるようになりました。
「生産消費者(プロシューマ)」
このプロセスを楽しむというのは、アルビン・トフラーの言う「生産消費者」に当たります。
生産消費者というのは、ただの「消費者」ではなく「消費者」であり「生産者」であるような人たち、つまりボカロが発売され、それを使って曲を作り発表・販売できるような人たちのことです。時代としては、生産消費者の時代であり、その流れで起こっているのがMAKERSと考えると理解しやすい気がします。この生産消費者を相手にする市場は大きくはありません、MAKERSでも同じですがグローバルニッチです。
MAKERSの意味する所は「プロセスのビジネス化」
僕がこの本を読んで感じたのは「プロセスのビジネス化」でした。今の世の中のトレンドは
- 大量生産・大量消費はすでに先進国から途上国へシフト
- 時間とお金がある人たちは、手間を掛けてでも人と違うものが欲しい
これは、マズローの欲求段階説を考えるとわかりやすく、人として安定した生活を送れるようになると「自己実現の欲求」が現れてきます。自分で「ある程度の手間」を掛けることに糸目を付けないというか、むしろそれを「楽しむ」という「創造性欲求」を満たすことになります。
ボカロにせよ、MAKERSにせよ、自分の欲しい物を「ある程度の手間(プロセス)」に対して対価を支払い、それを手に入れるというような流れが今後少しづつ出てくるように思います。ここでビジネスになりそうなのが「プロセス」自体を「ビジネス」として提供することが可能になるのではないか?ということです。
例えば
- 好きなキャラクターのフィギアを、ポーズや場面、表情までも発注する時に指定可能で、それを自分で組み立てる製品。もちろん組み立て説明書付き(自分専用プラモデルのようなもの)
- 部品の発注から行い、自分で組み立てる車(これはすでにある)
これらの消費者ターゲットは当然ながら、やや富裕層であり、マニア層になることになります。今までのマスマーケットではなく、グローバルニッチあるいは、ローカルニッチでのビジネスが主眼になるでしょう。
「でんかのヤマグチ」というお店がありますが、この記事にある
IHクッキングヒーターの購入客だけの料理教室を開くなど、お得意様を徹底的にフォローしている。
というのは、商品に対するアフターケアとも言えますが、製品としてプロセスの価格を乗せてを提供している。と考えることもできます。
まとめ
- 「MAKERS」は単なるハードのオープン化の話ではない
- 「マスマーケット」から「グローバルニッチ」へ
- 生産消費者をターゲットにするプロセス型ビジネスが見えてきた
- ユーザの創造性を高めるような製品開発が求められる
実はこれって日本が得意な分野なんですよね。いわゆる「おもてなし文化」です。これからの時代は、人が「便利と感じる」製品ではなく、人が「幸せを感じる」製品が徐々に押し寄せてくることになります。一歩下がってもう一度、製品開発とは何か?を考えなおすいい本を最後に紹介します。これは「日本」という国をベースに考えられた良書だと思います。MAKERSと合わせて読むと面白いです。